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ヒロのジャズ理論

初見演奏のヒント

この記事は、楽器の技術をすでに習得しているジャズ演奏家を対象にします。言葉を習得していなければ本の朗読をパフォーマンスできないのと同じように、初見演奏に当たっても楽器が体の一部になっている必要があります。また、譜面を書く時には、自分が初見を行う演奏家の立場になって書くように配慮する必要があります。

リズム 音高 コード進行でインプロ 移調

はじめに

初見での重要なポイント

リラックス

  • 初見でミスを起こす原因はプレッシャーによることが多いので、平常心を保つ訓練をしましょう。
集中力

  • リラックスしていながらも集中力を維持できるようにしましょう。
先を読む

  • 2小節先を読むのが理想です。
  • 最低でも2拍先を読めるようにしましょう。
区画割り

  • 読んでいる譜面上に、頭の中で区画線を引けるようにします。

まず最初に

拍子記号を確認し、拍子の変更が現れるかを確認。

  • 曲の最後までパラパラとめくって、もし拍子の変更が現れるなら印をつけます。
  • パルスの変更があるかを確認します。例えば6/8拍子の付点4分音符が、次の4/4拍子の2分音符のパルスと指定されているかもしれません。
調性記号の変更があるか確認をします。

  • 拍子記号と同じように、読み進んでから慌てることを防ぎましょう。
フレーズの区画割りを予想します。

  • 多くの曲は偶数で割り切れる区画割りで書かれています。ただしブラジルの歌や最近の新作ものは例外も多く見られるので注意が必要です。演奏を始める前にフレーズが明白なら、鉛筆で区画線を引くと助けになります。
  • 32小節のスタンダードはまず16小節ずつに分かれる
  • その半分の16小節は8小節ずつに分かれる
Subdividing 16 to 8
  • その半分の8小節は4小節ずつに分かれる
Subdividing 8 to 4
  • その半分の4小節は2小節ずつに分かれる
Subdividing 4 to 2
  • その半分の2小節は1小節ずつに分かれる
    • 2小節を4パルスと感じれば、2パルスずつに分かれる
Subdividing 2 to 1
  • 1小節は2パルスずつに分かれる
Subdividing 1 to half

リズム

例壱

  1. これは8小節フレーズですが、4小節ずつに印刷されていないので初見ではフレーズが掴みにくい例です。
  2. 4小節で線を引くことで読みやすさが増します。
  3. パルス(2分音符位置)で分割線をイメージするか、鉛筆で書き込むと、ミスをして落ちてもすぐに戻れます。7小節目に注目しましょう。パルスの位置がはっきりすることで読みやすさが段違いです。
  4. 休符を歌いましょう。オフビートの譜面では休符を歌うことが非常に大切になります。「アン」と声を出し、グルーヴしましょう。
    この音源サンプルでは、8分休符でのみ歌声が入っているので、図の分割線と混同しないように注意
  5. 曲のスタイルを理解し、書いてないないアーティキュレーションに対しスタイルに適合した演奏をする必要が生じるかもしれません。例えば5小節目の4分音符はほとんどの場合、短く演奏されます。
例弐

  • 忙しく拍子記号が変わる場合
    • この例では8分音符の音価は一定とします。
  • パルスの感じ方の例
    • もちろん曲によって色々なパルスの感じ方に対応しなければなりません。この例の曲では3/4拍子を2つのパルスで感じる必要があります。
    • 7/8拍子に引かれた赤線は、4拍目を半分足りないと感じると良いことを示します。
    • 3/4拍子がこの例のように書かれていた場合は、4分音符3つと考えるより、8分音符3つ+8分音符3つと考えた方が演奏するのが楽になるかもしれません。

音高

線上の音と間上の音を歌って覚えましょう。
5線の上の加線上の音は上行形で、下の加線の音は下降形で歌って覚えましょう。
次にヘ音記号
そしてヘ音記号の加線
なぜテノール記号が必要かと思うかもしれません。トロンボーンの音域は広く、中央C上のG以上はテノール記号で表示されるのが一般です。
テノール記号の加線

コード進行でインプロ

この例は、筆者の「ダン・ダン・ダン」(©2002 A-NO-NE Music) の最初の8小節です。ご覧のように適したコードスケールを初見で判断するのは困難かもしれません。

Dan-Dan-Dan by Hiroaki Honshuku ©2002 A-NO-NE Music, Cambridge, MA, USA

9〜10小節目を見てみましょう。この3つのマイナーコードは全てDorianでしょうか。続くA♭7はStraight Mixoでしょうか、それともMixo #11 (Lyd♭7)でしょうか。作曲家の意図は、最初の2つのマイナーコードはDorian、しかしF#-7はAeolianになり、A♭7はsubVの機能を表示しているように見えるのに、Straight Mixoになります。しかし初見で演奏する演奏家にそこまで分析する時間はありません。

頭の中で(または目の前の空中に)鍵盤を描いて問題のF#-7のコードトーンを押さえてみましょう。この4つの音はどんな場合でも安全に演奏できる音です。
続くA♭7です。ドミナント・コードなので、半音階スケール12音中2音を除いた10音、コードトーン以外全てアルタード・テンションとして演奏可能です。使えない2音はアヴォイドの第4音と、♭7と共存できないメジャー7の音です。アヴォイド・ノートの定義を覚えていますか?

  • 始めない
  • 延ばさない
  • 止まらない
  • 飛ばない

オルタード・テンションがわからなくても、アヴォイド音が思い出せなくても、コードトーンはいつでも安全に演奏できます。

この4つのコードトーンを空中の鍵盤に描く様子を動画で見てみましょう。

ARVE Error: Mode: lazyload not available (ARVE Pro not active?), switching to normal mode
コルトレーンが多用したように、根音(1)、2度 (または9th)、3度、5度を使用したインプロには複数の利点があります。

  • 演奏が楽
  • コード進行を暗記する助けになる
  • 聞き手にコード進行を提示できる。これはインプロをするにあたり重要なテクニック

ほとんどのモードにおいて1ー2ー3ー5を使って演奏するのは一貫性があります。例外はPhrygian(2度が♭2)ですが、機能和声では経過に使われるのがほとんどでしょう。

移調

C楽器奏者がB♭楽器やE♭楽器の譜面を読むためのテクニック

B♭楽器の譜面を読むには

フラットを調号に2つ足し、2度下を読みます。フラットを2つ足すということは、ト長調でシャープが一つの場合はフラットが一つの調号になるということを理解してください。

頭の中で読み替えた結果です。このやり方の練習はテノール記号を読む練習にも通じます。
E♭楽器の譜面を読むには

フラットを3つ調号に足し、ト音記号の譜面をヘ音記号の譜面として読みます。フラットを3つ足すということは、ト長調でシャープが一つの場合はフラットが2つの調号になります。

頭の中で読み替えた結果です。2小節目のF#に注目してください。調号でこの位置に♭が加わったのでナチュラルに変更されます。多少の練習ですぐに慣れます。

練習!練習!練習!

オススメ

 

 

 

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